Design Highlights of New Chinese Style: Su Embroidery, Pankou, Mandarin Collar, and Jacquard

服を見る目を育てる——新中式の意匠記号
新中式の服をちょっと見ただけで「あ、これ中国の伝統がもとだな」と感じさせるのは、いくつかの意匠記号の力です。まずは、形の部分——襟とボタン——から見ていきましょう。
立領(りつれい)——首元に立ち上がる襟
立領は、首に沿ってまっすぐに立ち上がる襟のこと。旗袍(チャイナドレス)の印象と重なる、新中式いちばんの目印です。首元がしまることで、姿勪がよく見え、あごと首のラインがきれいに浮かび上がります。今日の新中式では、ジャケットやブラウス、シャツにこの立領が使われ、かしこまりすぎない、どこか気品のある普段着をつくります。
盤扣(パンコウ)——結んで出来る、布のボタン
盤扣は、布を結んでつくる中国式のボタンです。洋服のボタンとちがい、紐を花や結び目の形に仕上げること自体が意匠になります。実用的に留め具として働きながら、胸元を飾る小さな工芸品でもある——そういう二重の楽しさが、新中式の胸元に品の良さを加えます。結び目の形にも花や吉祥をかたどったものがあり、ひとつひとつに手仕事の温かみがあります。
織りの世界——提花と宋錦
提花(ていか)——織りで描く模様
提花は、生地を織るときに糸の交わり方を操作して模様を出す技法・織物の総称で、日本語でいうジャカード織りに近い考え方です。プリントとはちがい、模様が糸そのもので構成されるため、光の当たり方で文様が浮かんでは沈み、織りならではの凹凸とした質感があります。
宋錦(そうきん)——「錦の中の文人」
提花で模様を織る中国の高級織物のなかで、ひときわ落ち着いた光を放つのが宋錦です。宋代(11〜13世紀)に現在の蘇州一帯で技法が確立され、中国三大名錦(宋錦・雲錦・蜀錦)のひとつに数えられます。金糸銀糸の豪華さで知られる雲錦に対して、宋錦は書画の掛け軸の裏地などにも使われた、控えめで雅な織物。「錦の中の文人」と呼ばれる品格は、日本の着物の好みともよく似ています。宝相花(ほうそうげ)や雲紋など、一つ一つ意味を持つ図案が織り出されるのも魅力です。2006年には中国の国家級非物質文化遺産に指定され、2009年には中国の養蚕・絹織物文化の一部としてユネスコの無形文化遺産にも登録されました。
→ 専門記事: 宋錦(そうきん)とは——「錦の中の文人」と呼ばれる、雅な絹織物
針と貝の仕事——蘇繍と螺鈿
蘇繍(そしゅう)——針で描く絵画
蘇繍は、江蘇省蘇州で2000年以上受け継がれてきた手刺繍で、中国四大名繍(蘇・湘・粤・蜀)の筆頭に挙げられます。絹糸を髪の毛よりも細く割く「劈糸(へきし)」という技で、一本の糸を16分の1、ときには48分の1まで割き、その極細の糸を数層に重ねて刺すことで、絵画のようなグラデーションが生まれます。面が平らで、針足が揃い、糸が細く、刺し目が密——そんな八字で品質が語られる世界です。見分けるポイントは、機械刺繍にはない微細な色のにじみと、糸の向きにわずかな強弱があること。それが手仕事の証です。
→ 専門記事: 蘇繍(そしゅう)とは——針1本で描く、2000年の刺繍の絵画
螺鈿(らでん)——貝殻の虹が放つ光
螺鈿は、夜光貝やアワビの真珠層を0.5ミリ以下の薄片に切り出し、漆や木の地に嵌め込む装飾技法です。殷・周の時代に起源をさかのぼるとされ、唐代に技術が成熟。日本にも正倉院の「螺鈿紫檀五絃琵琶」として伝わり、1200年以上たった今も貝の虹色を放ち続けています。見る角度によって青・紫・桃に変わる干渉色は、金属の光とはちがう、水のような揺らぎ。髪の黒との相性も抜群で、かんざしやヘアアクセサリーの意匠として今日も生き続けています。
→ 専門記事: 螺鈿(らでん)とは——貝の虹色が漆の黒に生きる、正倉院から続く光
tarobeniの技法別コレクション
タロベニでは、こうした技法の品を集めたコレクションをご用意しています。記事を読みながら、実際の品をのぞいてみてください。
- 刺繍の小物 — 針と糸の繊細な仕事
- 宋錦の小物 — 雅な織りの格
- 螺鈿のアクセサリー — 貝の虹光彩
- 香雲紗の小物 — 薯莨染めの絹の深い色
- 扎染の小物 — 絞り染めのかたち
- 絨花の小物 — 絹糸の花
意匠と技法を知ると、服や小物はぐっと面白くなります。次回は、いよいよ日常への取り入れ方——シーン別のコーデと「まず一つから始める」選び方をご紹介します。
全コレクションを見る → tarobeni.shop