What is New Chinese Style? Traditional Chinese Fashion, Made Everyday

墨黒の背景に畳まれた雲紋のシルクと現代的なニット、温かい光を浴びる盤扣の結びボタン(生成AIによる装飾画像)

新中式——「新しい中国式」ということば

「新中式(しんちゅうしき)」は、そのまま読めば「新しい中国式」。ファッションの文脈では、中国の伝統服飾の意匠や技法を、今日の暮らしに合わせて再解釈した着こなし・服づくりの潮流を指すことばとして、近年、中国を中心に急速に広まりました。

襟の形、結びボタン、刺繍、織物の紋様——そうした伝統服飾の要素を、まるごと昔の姿のまま再現するのではなく、ジャケットやスカート、ワイドパンツ、小物といった今の服の語彙に組み直す。それが新中式の基本的な考え方です。

漢服との違い——「再現」ではなく「再解釈」

中国の伝統衣装ブームには、大きく二つの流れがあります。

ひとつは漢服(かんふく)。漢民族の伝統的な衣装を、時代考証をもとに当時の姿へ近づけて再現し、イベントや撮影、記念日など特別な場で楽しむ文化です。形や装束の様式が尊重され、歴史への敬意そのものが楽しみの中心にあります。

もうひとつが新中式です。漢服が「再現」であるのに対し、新中式は「再解釈」。伝統の要素を大胆に取り出して、現代の服とミックス&マッチさせることをいといません。しかも、通勤や通学、休日のお出かけなど、ふだんの生活で着られる実用性を大切にします。絹の光沢のあるジャケットをデニムに合わせる、刺繍の入ったブラウスを普段のスラックスに合わせる——そういう自由さが新中式の持ち味です。

つまり新中式は、特別な日に着る衣装ではなく、月曜日から金曜日まで着続けられる「今日の普段着」であることを目指す潮流、と言えます。

なぜ今、新中式なのか

新中式が中国で大きな潮流になったのは、2020年代に入ってからとされます。市場規模は2023年には10億元(日本円でおよそ200億円)を突破したと報じられ、2024年初頭にはプリーツスカートの一種「馬面裙(ばめんくん)」が大流行。街にも、SNSにも、伝統の意匠をまとった日常の服が増えていきました。

背景にはいくつかの要素が重なっていたと考えられます。中国の若い世代が自国の文化を誇らしく思う気運が高まったこと。SNSで伝統服飾の着こなしやすらりの映像が広く共有されたこと。そして、衣装としての完全な再現ではなく「普段着として着られる」手軽さが、購入のハードルを大きく下げたことです。

日本でも、中華メイクや中華グルメを入り口に、中国の美意識への親しみが少しずつ育っています。新中式は、その流れのなかで、もっとも身近に試せるファッションのかたちと言えるでしょう。

国潮(グオチャオ)との違い

近いことばに「国潮(グオチャオ)」があります。こちらは中国国内で若い世代を中心に、自国のブランドや文化が再評価される大きな流れを指すことが多く、ファッションだけでなく飲食・家電・文化事業までを含む幅広い言葉として使われます。対して新中式は、服飾・暮らしの意匠にしぼって「伝統の再解釈」を楽しむ潮流です。国潮という時代の流れのなかから、新中式というファッションのかたちが生まれた——そんな関係と理解すると、ことばの位置づけが見えてきます。

日本の暮らしとの相性

新中式は、日本の服飾文化と不思議なほど気質が似ています。

絹や刺繍、織りの紋様といった素材の美しさは、着物の世界で暮らしてきた私たちには「知っているようで新しい」感覚として届きます。控えめな発色の織物、一針一針の仕事が光る刺繍、貝の虹彩——それらを今日の洋服のなかで出会い直すのが、新中式を楽しむこつです。

配色や紋様には、それぞれ意味が込められているのも面白さのひとつ。雲の紋様、花の宝相文、福や長寿の吉祥文——図案を選ぶときに、その意味を知ると、服選びはぐっと深くなります。

この連載について

この連載では、新中式を今日の暮らしに取り入れるための手がかりを、三回にわたってご紹介します。

  • 第一回(本記事): 新中式とは何か——定義と成り立ち
  • 第二回: 意匠と技法の見どころ——蘇繍・盤扣・立領・提花などの要素解説
  • 第三回: 日常への取り入れ方——シーン別のコーデと「まず一つから始める」選び方

タロベニは、中国の伝統技法を今日の日常へ運ぶセレクトストアとして、蘇繍・宋錦・螺鈿・香雲紗・扎染・絨花といった技法の小物や服飾を、産地から選んでいます。東洋の美を、今日の日常へ。その第一歩として、この記事が役に立てばうれしいです。

新中式セレクトを見る → tarobeni.shop / 新中式の商品一覧

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