国潮(グオチャオ)とは——中国Z世代のカルチャーとファッション

SNSやファッションの記事で、「国潮(グオチャオ)」という言葉を見かけたことはありませんか。中国語の「国(グオ)」は国、「潮(チャオ)」は潮やトレンドのこと。つまり国潮とは、自国の文化やブランドが「潮(トレンド)」になること——中国の若い世代を中心に、自分たちの伝統と国産品を誇りとして楽しむ、大きな潮流のことです。

ファッションの話に見えて、その中身は文化の変化です。中国ブランドが世界のコレクションに登場し、王朝の紋様がスマートフォンのケースに光り、漢服を着た若者が公園を歩く。この記事では、国潮という言葉の意味から、その始まり、ファッションへの現れ方、そして日本での楽しみ方までをまとめます。

2018年、ニューヨークでの「中国李寧」

国潮が一気に動き出した象徴的な出来事があります。2018年2月、スポーツブランドの李寧(リーニン)が、ニューヨーク・ファッションウィークに登場しました。体操の金メダリスト、李寧氏が創業した由緒あるブランドの、この日のコレクション。防寒ジャケットやスウェットに、「中国李寧」という漢字が大きく配されていました。

それまで「世界のブランドを追う側」と見られがちだった中国のファッションが、漢字と伝統の意匠を胸を張って世界に見せた——この出来事は中国国内で大きな話題となり、国産ブランドへの見方が変わるきっかけになりました。この年を「国潮元年」と呼ぶこともあります。ほかにも、故宮博物院(紫禁城)が伝統の意匠をお土産や文具にほどこした「故宮文創」商品が大ヒットするなど、伝統が新しい商品として次々と生まれ変わる時代が始まっていました。

なぜ広まったか——Z世代の文化的自信

国潮を支えているのは、1990年代後半から2000年代に生まれた、いわゆるZ世代と呼ばれる世代です。この世代は中国の経済成長の中で育ち、海外のブランドに対して引け目を感じる理由を持たずに育ちました。自分たちの文化の豊かさを当たり前のものとして知っている——だからこそ、漢字のロゴも、王朝の紋様も、故宮の意匠も、「古いもの」ではなく「誇らしいもの」として受け取れるのです。

言葉としては「国潮」はブランドの名前ではなく、時代の流れをあらわす言葉です。国産品を選ぶ「国貨(グオフォ)」ブーム、漢服を着る若者が増えた漢服ブーム、伝統の意匠を今日の製品に移す商品づくり——ファッション、家電、飲食、文化事業までを含む幅広い流れを、このひとことばが指しています。

ファッションにあらわれた国潮

ファッションの面では、国潮はまず「漢字と伝統の意匠を、正面から使う」形で現れました。漢字のロゴを大きく配したスウェットやTシャツ、龍や雲の紋様を施したジャケット、宮殿の文様を移したスニーカー。それまでの「海外のブランドらしい」デザインに対して、中国の文字と図像を主役にする服が、若い世代に支持されました。

そしてこの流れは、次の段階へ進んでいます。ロゴの力で示した文化の誇りを、今度は服づくりの意匠へ深く移す潮流——それが新中式(しんちゅうしき)です。漢服や旗袍、唐装といった伝統服飾の襟の形、結びボタン、刺繍、織物の紋様を、今日のジャケットやスカート、小物のなかに組み直して、月曜日から着られる普段着にする。国潮という時代の流れのなかから、新中式というファッションのかたちが生まれた——そんな関係です。新中式については、新中式とは?——中国伝統服飾を今日の普段着への連載で詳しくご紹介しています。

日本での楽しみ方——伝統×現代の視点で

日本で国潮を楽しむのに、ブランドの流行を追う必要はありません。大事なのは視点のほうです。中国の伝統——漢字の形、雲や花の紋様、立領と結びボタン、絹や刺繍の質感——を「今日の暮らしに似合うもの」として選び直す。それ自体が、国潮という流れの楽しみ方の芯の部分だからです。

たとえば、立領のブラウスをデニムに合わせる。盤扣(ぱんこう)の結びボタンが襟元を飾るベストを、白いシャツの上から羽織る。花の刺繍が施された靴で、いつもの服に足元の表情を足す。中国の伝統と今日の服の語彙が出会うところに、国潮の空気は自然に生まれます。

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