技法教科書 vol.3 宋錦(そうじん)とは――王朝が護った「錦の冠」、いちばん上品な絹織物
新中式(新しい中国風)ブームで、ふたたび世界から注目されている絹織物があります。宋錦(そうじん)。宋代の宮廷が育てた織錦で、「錦繍の冠」と称される格をもつ生地です。
王朝に仕えた織物
端を発したのは北宋の末(11世紀ごろ)。南宋の高宗が宮廷の衣装と書画の装裱(額装)のために、蘇州に織所を設立したことで本格化しました。「宋錦」の名は、後の清代が宋代様式への敬意から正式に名付けたものです。南京の雲錦、成都の蜀錦と並ぶ「中国三大名錦」の一つで、2006年に中国の国家級無形文化遺産に、2009年には「中国の伝統的な養蚕と絹織物の技術」の一部としてユネスコ人類無形文化遺産代表作リストに登録されています。
なぜ「上品」と言われるのか
宋錦の技術的な特徴は、経糸で文様を表す古い「経錦」と、緯糸で表す「緯錦」の両方を受け継いだこと。経糸2本に対して緯糸3本を織り込み、色糸をかけ替えながら、生地の厚みを増さずに一つの文様に十色以上の階調を出せます。彩度を抑えた発色と、幾何学文様の骨架に花卉を納めた意匠は、派手すぎず深みがある——だから千年経ても「上品」と言われ続けるのです。
いま、再び主役に
2014年の北京APECで首脳たちが着た「新中装」に宋錦が採用されると、2024年旧正月には馬面裙(マーミンチュン)ブームと重なり、中国のECで「宋錦」の検索量が前年同月比で2000%超の急増と報じられました。ただし市場には「宋錦風」の模造品も多いのが実情。見た目は似ていても、織の密度・生地の柔らかさ・色の重厚感は本物とは別物です。
本物の見分け方とお手入れ
伝統的な手織りの宋錦は、文様に立体感があり、生地は柔らかく重厚。大量生産品は生地が硬めで、文様の境界が甘くなりがちです。お手入れは水洗いせずドライクリーニングを。生糸と精練糸の混織のため、水濡れは風合いを損ないます。
茶席に一枚の宋錦。香囊をバッグに下げる。王朝の格を、日常の小さなところから。tarobeniが宋錦を選ぶ理由です。