技法教科書 vol.2 螺鈿(らでん)とは――貝が光で描く、正倉院から続く虹色の技法

「らでん」という言葉を聞いたことがある方は多いはず。螺鈿は、夜光貝やアワビの貝殻の内側(真珠層)を薄く削り、文様に切って漆や木地にはめ込む装飾技法で、日本の伝統工芸の世界に古くから息づいています。

シルクロードを渡り、正倉院へ

螺鈿は中国で唐代に大きく発達し、遣唐使の時代に日本へ伝わりました。日本語の「螺鈿」の最古の用例は、天平勝宝8年(756年)の『東大寺献物帳』——いわゆる正倉院宝物の目録です。名品「螺鈿紫檀五絃琵琶」はその代表。貝の虹色が、一千二百年以上経った今も変わらず光っています。

虹色の正体は「干渉色」

螺鈿が虹色に煌めくのは、貝殻の真珠層がアラゴナイト結晶とタンパク質の微細な積層構造だから。光が反射と透過を繰り返して干渉し、見る角度で色が変わります。絵具では絶対に再現できない光です。職人は貝を0.06〜0.15ミリまで薄く研ぎ上げます。薄くするほど、透明感と虹色が際立ちます。

いま、一番身近な伝統

「らでん」は日本の漆工用語としてすっかり定着し、蒔絵と組み合わせた作品には国宝もあります。そして2024年には螺鈿ネイルが美容トレンドに浮上し、伝統工芸の貝シートを爪に転用する試みが話題になりました。千二百年前の技法が、いま自分の手元で光る——螺鈿はそんな技法です。

本物の見分け方

鍵は「角度」です。天然の貝は同じ文様の中でも色の出方や筋が一箇所ずつ違い、角度で色が動きます。印刷のように光が均一なら要注意。貝風のフィルムや樹脂パーツも出回っているため、素材表示の確認も大切です。

お手入れ

長時間の水につけ置きは禁物。使用後はやさしく洗い、柔らかい布で水気を取ってください。直射日光と極端な乾燥を避け、硬いものと重ねない(貝の端の欠け・浮きにつながります)。

黒檀に螺鈿を散らした簪ひとつで、髪に正倉院の光が宿る。tarobeniが螺鈿を扱う理由です。

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